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緑の島アイルランドで料理を学ぶ!

2004.7月
自然の中にケルト人の歴史、文化が息づくアイルランド。
妖精が暮らすといわれている森や草原がある不思議の国。
今回は、アイルランドで料理を学んできました。

 のんびりした風土と素材な料理とに魅了され、アイルランドに通うようになってはや数年。主要な都市はほとんど訪れたけれど、実はずっと気になっていていけない場所があった。そこがバリマルークッキングスクール。なんでも敷地内に畑や牧場をもちオーガニッククッキングを実践しているとのことで世界各国から生徒が押し寄せているらしい。食いしん坊を自任する私としては「絶対いかなきゃ!」と思いつつも、どうにも不便な場所にあることと、あのリッツやコルドンブルーに並ぶ高価な授業料にずっと二の足を踏んでいた。 でも、今回は4年ぶりのアイルランド。次にいつ行けるか分からないし、3日間コースにちょうど空きがあったことから参加するなら今回しかない!と自分にはっぱをかけ申込を決めたのだった。7月5日〜7日まで。短い時間だけど憧れ続けたバリマルーの技術とその精神をしっかり体感してこよう、と決意する。 牧草地帯
↑広大な敷地で牛も満足気です。
 バリマルークッキングスクールまでの道のりは遠かった。飛行機で2回乗継をしてダブリン空港に着き、そこからバスで3時間かけてキルケニーへ行く。ここで一泊し、次の日またバスに4時間乗ってミドルトンへ。ちょうど日曜日だったことからバスがないためここからはタクシーしか手段がない。雑貨屋の店番をしている男の子に相談してみると、親切にもタクシーを電話で呼んでくれた。 しばらくして迎えに来たタクシーはサイドミラーにヒビが入っているわ、シートに穴が開いているわでちょっと不安になる見た目。にも関わらず、ドライバーのお兄さんは細?いあぜ道(しかも一方通行ではない)を時速 100km程で飛ばしながら携帯で誰かと談笑している。ふと、「アイリッシュの運転する車に気をつけていればアイルランドは安全だ」という本で読んだフレーズが頭に浮かぶ。心臓に悪いので眼をギュッとつぶり、メーターは見ないようにする。20分程たったところで車が徐行をはじめたのを感じ眼を開ける。と、そこにひろがったのは…。広大な緑の絨毯、色とりどりの花々、牛の群れ、けたたましく鳴くにわとり達。圧倒される私に向かってお兄さんは得意げに「Perfectplace!」とひとこと。そうなのだ。アイリッシュに「バリマルーに料理を習いに行く」と言うと、皆が口を揃えて「あそこは最高だ」と絶賛する。彼らの愛国心の強さがこういうところでも感じられる。「がんばれよ」と言って再び猛スピードで車で去っていくお兄さんを後ろに感じつつ、私はこのだだっぴろい学校にまだ見とれていた。

私がとまった学校のコテージ外観

 
 生徒が宿泊するロッジはいくつかに分かれており、ピンクの壁にバラがからまるその名も ROSEHOUSEや海辺のコテージのようなCOTAGE HOUSE と、どこも広々として居心地よい。各部屋に鍵がついていないのは気になるところだが、ここではそんな心配をすること自体が無粋ということなのだろうか。 それにしてもここは校長であるダリーナの食に対する愛情と彼女の乙女心が詰まった「偉大なるダリーナ王国」である。りんごや洋梨のなる果樹園や授業で使う野菜畑にハーブガーデン…。そんな庭のあちこちには白木のベンチが置かれ、訪れた人は咲き乱れる花の甘い香りを満喫している。全てが彼女のセンスによって選ばれ、作れているのだ。 いよいよ明日からバリマルーでの料理研修がはじまる。今夜は早めにベットに入り明日に備えるとしよう。

 朝食は各コテージに備え付けのキッチンで好きなものを食べるスタイル。とれたての平飼い鶏の卵や搾りたての牛乳、バリマルーブランドのシリアルやジャム、パン…。どれもおいしい。日本ではマーガリンさえも薄く塗らないようにしているのに、ここではパンと同じくらいの厚さのバターとジャムを塗ってしまう。 9:30に教室に集合。眼があうと皆「HELLOW!」と笑顔で話しかけてくれる。40〜50代の女性が多いが、夫婦で参加している人や若い男性もいる。共通点はみんなおいしいものが好きな顔をしていることとフレンドリーなところ!こんなピースフルなところへきたら、だれもがそんな気持ちになるのかも。


アイリッシュブレックファスト。
ボリューム満点
今日は午前、午後ともにダリーナのデモンストレーション。テーマは「手軽にお友達や家族におもてなし料理をつくろう」というもの。 きれいな白髪に大きなメガネが印象的な彼女、テレビにもよく出演するというだけあり、とにかくパフォーマンスがうまい。早口で喋りながらも手はテキパキと大きく動かし眼はしっかりと生徒をとらえる。今日のデモで作ったのはなんと 35品目。前菜、パン、お菓子、ジャム、様々なものが出来上がったがどれも素材の味を生かしたシンプルなものが多い。が、試食してみるとそれぞれの味のよさに驚いた。サラダのハーブは摘みたてだから香りはこのうえなくさわやかだし、チキンのかくし味で加えたアイルランド産はちみつも上品な甘みを口に残す。シェパーズパイも、バターのミルキーなコクがたまらない! 久しぶりの英語の洪水に後半は集中力が切れ半分も聞き取れなかったけれど、出来上がりの形と味見をしたことでなんとなく分かった気になった。さて、明日は実際に私がキッチンに立つ番。これと同じ味がちゃんと作れるのかしら…。


男性も多い。
みんな真剣だけど、楽しそう!
実習の授業では、昨日味見をした35品目から各自ふたつ選びそれを作るというシステム。ゆえにパンをこねる人、大きなマスをさばいている人、チキン一匹と格闘している人など、それぞれが思い思いに料理に取り組んでいるなんとも自由な雰囲気。私は大好きなアイリッシュスコーンとリュバーブパイを選択。日本で食べるスコーンはなんだかお上品なものばかりだが、アイルランドのは大ぶりで、しっとりした食感なのが気に入っている。バターや粉が違うからしょうがないのだろうが、自分でもおいしいスコーンを絶対作りたい。
↑実習の前。
各自のテーブルに材料が
用意されている。
リュバーブも、さっき庭先で採ったフレッシュなものをふんだんに使える贅沢なチャンスなんて、めったにないし! 一部屋に20人位の生徒に対しアシスタントが3人ついてくれ、分からないことは彼女達に教えてもらう。まずはタルト生地をつくることからはじめるが、私がきっちり粉を計っていたらアシスタントさんは「そんなに丁寧にやらなくてもIt’s OK!」 と、ドバドバッと粉を加えてきた。スコーンにしたって「あまり生地をさわっちゃだめ」と、ほんとうに生地をまとめただけで終わり。3分でできてしまうシンプルさ。でも、焼き上がりはなんともいい色で味も納得のいくおいしいものなのだ。 あまりにも簡単にできてしまったので、残ったタルト生地でオーナメントクッキーを作ったりスコーンにポピーシードやドライハーブでデコレーションなどをしていると、あっという間に時間が過ぎてしまった。

リュバーブ。7月が旬。
今年は当たり年だったそう。
 ランチは各自が作ったものをみんなで試食。あちこちで「 Lovely!」「Great!」「Fantastic!」と賛辞の言葉が飛び交う。アイリッシュは本当に人のことをよく誉める。いや、人だけじゃない。食、花、天気、洋服…。何に対しても「良いところ」をみつけて誉めるのが得意なのだ。そういうやさしい言葉はたとえお世辞だとしても相手の温かな気持ちが伝わってきて、とても嬉しい。私がアイルランドにリピートするのは、こういう他人への思いやりの気持ちを確認したいから、かもしれない。

 このようにデモンストレーション、実習を繰り返し、あっという間に最終日。最後の授業ではなにか校長や生徒のコメントなどがあるのかと思いきや、それぞれが適当な時間に引き上げていき少し拍子抜け。どこまでも各自のマイペース。 この3日間で学んだのは約50品目。全部をマスターできた、とは決して言えないけれど食材への「愛情」、作る「楽しさ」、食べ手への「思いやり」を再度認識することが出来た。細かい技術を習得することももちろん大切。だけどなによりもこの3つが「食べ物の味」の決め手になるんじゃないだろうか。シンプルなことかもしれないけれど、とても大事なことを吸収できた。
 また、いつか。この学校に通うために今日から英語の勉強をはじめようか…。
  
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リュバーブのパイ
出来上がり!奥はスコーン。


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